スクリーンから漂う香りの世界 - パフューム ある人殺しの物語 - [映●●●●○]
18世紀、パリ。
ジャン=バティスト・グルヌイユ(ベン・ウィショー)は、
生まれながらにして常人には嗅ぎ取れない臭いまで察する超人的な嗅覚を持っていた。
街へ出たある日、彼は初めて出会う至高の香りを感じ、
それがプラム売りの娘から放たれている事を知る。
香りに夢中になるあまり娘の側へ側へと近寄るグルヌイユだったが
恐怖を感じて声を上げそうになった彼女を彼は殺してしまう。
死体となった彼女から
やがて香りが消えてしまった事に気づいた彼は
"香りを永遠に保存する方法"を求めて調香師に弟子入りするが・・・・
■監督 トム・ティクヴァ
■脚本 トム・ティクヴァ/アンドリュー・バーキン/ベルント・アイヒンガー
■音楽 トム・ティクヴァ/ジョニー・クリメック/ラインホルト・ハイル
■出演 ベン・ウィショー/ダスティン・ホフマン/レイチェル・ハード=ウッド etc.
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世界中にある、どの映画館のスクリーンにも、
映し出したものの香りを放つ機能は組み込まれていません。
それはTVや家庭用メディア再生機器においても同様です。
人の嗅覚は良い香りだけでなく
悪臭も感じる事が出来るようになっているので、
例え技術的に可能だったとしても、それは搭載される事のない機能である気がします。
"香り"が物語の重要な一部となっているこの映画にとって、
これは大きな障壁で、言い換えれば製作陣が発揮する手腕の見せ所です。
悪臭漂う市場、物であふれる街道、そこをよぎる芳しい匂い。
この映画は
それを映像と音楽で表現します。
世界初(かどうかは分からないですが)、香る映画です。
果汁あふれるレモンを見て"すっぱさ"がよぎるあの感覚、
それを香りに置き換えて表現するような作品でした。
また、映像だけでなく
ベン・ウィショーの演技も素晴らしいです。
その感性のあまり
内から沸々と湧き出るような欲望をもつ主人公を
言葉少なげに演じています。
台詞やなんかではなく、その雰囲気にグッと引き込まれるようです。
香りを表現する映像と香りに駆り立てられた狂人を描く物語、
そんな映画をお求めのあなたにお薦めの作品です。
パフューム スタンダード・エディション
パフューム ある人殺しの物語(Blue-ray)
狂気の箱 - キューブ - [映●●●●○]
目覚めると
そこはトラップの坩堝、狂気の立方体。
何故、ここにいるのか?
ここは何処なのか?
理不尽に憤る間もなく迫る生命の危機を前に
成すべき事はひとつ、このCubeからの脱出。
この不条理に答えはあるのか?
■監督 ヴィンチェンゾ・ナタリ
■脚本 ヴィンチェンゾ・ナタリ
■音楽 マーク・コーヴェン
■出演 モーリス・ディーン・ウィント/デヴィッド・ヒューレット/ニコール・デボアー
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その立方体は
■各面が隣へ移動するハッチを持っている。
■殺人的な罠が仕掛けてある場合がある。
■罠の発動条件は一意ではない。音、圧力etcetc.
映画「キューブ」は
理由も分からずこのフザけた箱に閉じ込められた7人が
脱出を試みる低予算映画の傑作です。
意味を伝えることもなく、自分を内包する狂気の箱。
その理不尽は7人の苛立ちを掻き立て、
何に反応するとも知れないトラップが息をも詰まらせる無言の緊張を生む。
"一歩間違えれば"や"一瞬の油断が"と言った言葉はこの映画の為に。
そう思えるほどに、緊張感あふれるこの作品は
愛や恋だのメロウな宣伝文句が踊る映画にうんざりしているあなたにお薦めです。
CUBE ファイナル・エディション
取り戻す心 - 16ブロック - [映●●●●○]
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夜勤明け、やっとの非番を喜ぶアル中刑事ジャック・モーズリ(ブルース・ウィリス)は
署に戻った処を上司に捕まり"最後の一仕事"を頼まれてしまう。
「囚人エディ・バンカー(モス・デフ)を16ブロック先の裁判所へ護送して欲しい。」
それは15分で終わるはずの任務だったが・・
■監督 リチャード・ドナー
■脚本 リチャード・ウェンク
■音楽 クラウス・バデルト
■出演 ブルース・ウィリス/モス・デフ/デヴィッド・モース
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裁判所に召喚される証人と、ソイツを消したい悪徳警官。
どちらとも大した関係がないのに事件へがっつり巻き込まれる主人公。
この構図は同主演のダイ・ハードとあまり差異がありません。
しかし、それを類似品として埋もれさせずにいるのは
これが堕落警官復活のストーリーであるという点です。
アルコール中毒で、無気力に毎日を過ごすジャックが偶然出会った"弱き人"エディ。
彼を守る過程でゆっくりと蘇る正義が終盤を演出します。
余談ですが個人的に好きなシーンを↓
■激しい嵐の晩、2人乗りの車で走っているとバス停にいる3人が見えた。
・一人は自分の理想を絵に描いた女性、
・一人は親友、
・一人は具合が悪くて立っているのもやっとの老人。
■席は一人分しかない。君だったらどうする?
物語の途中、エディがジャックにする質問です。
終盤に差し掛かってから分かるジャックの回答には(。ロ。「)オォ の一言。
彼が本当はどんな奴なのか?
あぁ、皆さんに教えたいのは山々なのですが、気になる方は是非是非作品を(笑)
16ブロック
エンディングでその意味を知る - ステイ - [映●●●●○]
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謎に満ちた青年ヘンリー。
彼はその日、雹(ひょう)が降る事を言い当て、
生きている両親を殺したと言い、
周りに人が居なくても声が聞こえると言う。
精神科医のサムは"自殺願望のある患者"として彼を担当することになるが――。
彼との接触により歪んで行く現実に翻弄されるサム。
この世界に真実はあるのか?
■監督 マーク・フォースター
■脚本 デヴィッド・ベニオフ
■音楽 アッシュ&スペンサー/トム・スコット
■出演 ユアン・マクレガー/ナオミ・ワッツ/ライアン・ゴズリング
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斬新な映像編集と静かに進んでゆく物語。
不可解な行動、発言、現象。
繰り返し触れなければ良さを理解出来ない。
そういう難解な映画をご所望の方にはコレがお勧めです。
冒頭より意味不明に近いその物語は全てエンディングの為に用意されています。
"何の物語なのか?"
それに気付いた時、この映画の見方はまるで変わってしまうのです。
1回目はエンディングが切ない。
2回目は全てが切ない。
観終わったあと、段々と身体に染みる不思議な映画です。
ステイ (ベストヒット・セレクション)
オタクが繰り広げる密室推理劇 - キサラギ - [映●●●●○]
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自殺したアイドル「如月ミキ」の一周忌に集った5人のファン。
楽しい集いとなるはずだった会の最中、ある男は口を開く。
「あの子は本当に自殺だったのか?」
次々と発覚する事実。
5人は真相にたどり着けるのか?
■監督 佐藤祐市
■脚本 古沢良太
■音楽 佐藤直紀
■出演 小栗旬/ユースケ・サンタマリア/小出恵介/塚地武雅/香川照之/酒井香奈子
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内容は部屋でひたすら推理!
推理小説好きでも無い限り、これだけで倦厭しそうですが
配役の5人がその強烈なキャラクタを駆使して映画を軽快に進めます。
激しく展開する推理を混乱させる事なく観客に伝える脚本は見事、の一言。
絶妙なタイミングで発覚するコミカルな事実の連続と
冒頭の展開からはまるで想像できないヒューマンなクライマックス。
これは推理好きも、コメディ好きも、ヒューマン好きも楽しめる、
どれも好きな人は1度で3つ分楽しめるオイシイ作品です。
エンドロールは2回あるので、
早まって席を立たないほうが良いと思いますよ。ええ。
キサラギ スタンダード・エディション